
| 静寂の石段 (二月堂裏参道) 2026/7 P9 |
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| お水取りで知られる東大寺二月堂はいつ訪れても絵になるポイントが多いところだ。なかでもこの裏参道で石段越しに本堂を仰ぐ構図は人気があり、数えきれないほど写真や絵にされている。誰もが知っている景観でも、実際に接するとどうしても描きたくなってしまう。それだけ調和のとれた美を感じる景観なのだ。しかし、これを素直に描いてみても、新味がなく面白くない絵になってしまう。どう描けば自分のまなざしというか個性が宿った絵になるのかと考えたが分からない。もう夕暮れが近い時刻なので、分からないままスケッチを急いだ。鉛筆を走らせていると、次第に本堂から下りてくる人影がまばらになり、夕暮れ特有の弱く柔らかい光が石段を照らしていた。ふと人影が消え、辺りが静寂に包まれたときに気が付いた。この静寂こそ今この時刻にしかない景観ではないかと。ならば、この一瞬の空気を描き留めることが自分の眼差しで描くということではないか・・と。だが、その結果は?自分の記憶として十分に描けたとは言い難いのが残念だ。 |